心意雑感 

サイコロネットメールマガジンに掲載された、心に関する雑感です。

 

P17 (No171〜180)

「特定非営利活動法人としてのスタートに当たって」
平成20年2月11日 第171号に掲載

 サイコロネットはこのたび特定非営利活動法人としてスタートしました。平成13年にサイコロネットを立ち上げ、 今日まで活動を続けてこられたのは、多くの方々のお力添えがあった賜物と深く感謝致します。そして今、NPO化に 多大の協力をいただいた仲間に感謝するとともに、これからぜひ目標を達成させるために共に頑張っていこうと決意 を新たにするものであります。

 当初、サイコロネットはカウンセリングの臨床経験の場作りを目的として、セミナーを開催してメンバー自らが 勉強を続けると共に、実際にカウンセリングをおこなう場作りに努めてきました。その間、多くのノウハウを蓄積し、 この心意雑感でも様々な観点からカウンセリングやセラピーについて考えてきました。その結果、現在のカウンセリング 業界の置かれた状況や利用に対する多くの障害、ニーズの変化などにどう対応すればよいか、一つの結論に至りました。 それがサイコロネットをNPO化した理由です。

 これはカウンセリングはボランティアでおこなうのがよいと考えているということではありません。 カウンセラーの収入面や地位の向上についても深い関心を持っています。カウンセラーにはもっと収入が上がるように なってもらいたいのですが、一方、クライエントはもっと安い料金を求めていますし、カウンセラーの力不足についても たびたび指摘されています。この両者のギャップを埋めるためには、それぞれのニーズの調整役が必要であり、 その役割をNPO法人サイコロネットが担おうとしているのです。

 援助を必要とするたくさんの人には対して、無料のメール相談を窓口として、無料の範囲内で悩みが解決するならば それでよし、さらに有料のメールカウンセリング、電話カウンセリング、面接のカウンセリングへと、クライエントに とって最もふさわしい、質の高い援助を提供します。一方カウンセラーに対しては、無料レベルのボランティアから 有料の正規カウンセリングまで、その力に応じてカウンセリング能力を活かせる場を提供します。一定以上の力があり、 勉強を続けてカウンセリングの力を高めていくことが条件になりますが、臨床経験のないカウンセラーにとっては、 またとない機会になるはずです。

 サイコロネットはカウンセラーとカウンセリングを利用したい方々双方に開かれた、心のふれあいの場を提供して いきたいと考えています。ぜひ、今後ともご支援ご協力をお願い致します。
(佐々木)


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「ガン検査で考えたこと」 平成20年3月6日 第173号に掲載


 先日、ガン検診の際に要精密検査という診断を受けたので、生まれて初めて内視鏡検査を受けて来ました。いわゆる胃カメラです。今までずっと異常なしだったので、とうとう私にもやってきたかと思いました。 ガンを宣告されるのが怖くて検査を受けないという人もいますが、ガンがあるのなら早めに見つけて対処した方が長生きできる確率が高くなりますので、よい機会だと思って出かけていきました。

 検査に先立って、事故が起こるかもしれないということの説明と、ガンであった場合に本人に知らせるか家族に知らせるかの確認がありました。日本ではまだまだガン、特に末期ガンは受け容れられない人がいるのだなと思うと同時に、医師の側もガンの宣告が上手にできないので、逃げているなと思いました。死に対する怖れ、トラブルに対する怖れ、どちらにも根底には恐怖心があって、逃げているのではないでしょうか。私は、事実を受け容れて初めて本当の自分を生きることができると考えていますので、もちろん私自身に通告してもらうことにしました。

 さて、内視鏡検査の当日、本検査に先立って血圧の検査があったのですが、これが異常に高かったのです。心臓はドキドキしていませんでしたし、測定してくれた看護士さんと軽口を交わしたりして、表面的にはリラックスしていたのですが、身体はしっかりとストレス反応を起こしていたのです。これが生身の人間としての反応です。もちろん、心臓がドキドキしたり、緊張で固くなっていれば、これも生身の人間としての反応ですから、もっとわかりやすかったと思います。

 考えてみれば、小さいときから私は怖がりで、注射も怖くてたまりませんでしたし、他人に話しかけるなどということもできない内気な子供でした。怖いことや嫌なことは避けたいと思うのは当然ですが、どうしてもやらなければならないときには恐る恐る慎重にやるというのが常でした。これが私の核にある気質というものなのでしょう。今は、注射も怖くはありませんし、知らない人に話しかけて会話を楽しむこともできるようになりましたが、この新しいことに対しては緊張して身構えるという気質は変わっていないのでしょう。

 この気質に認知の歪みが加わって、恐怖心が拡大されてしまうと、結果を怖れて検査を受けないとか、新しいことには挑戦しないということになりますが、認知の歪みが少なく、恐怖心が大きくならなければ、万一のために最小限の緊張をして、積極的ではあるけれども慎重に進めていくことができるようになるのでは ないかと考えています。

 胃カメラは口から入れるタイプで、喉の麻酔をしているとは言っても、決して楽なものではありませんでした。ただ、もうこりごりというほどでもありませんでした。次はもっと楽にできると思います。次回の血圧検査にも注目です。普段は気がつかないことでも、このような非日常的なことがあったときには、自分を考える良いチャンスだと思います。ちなみに検査の結果は異常なしで、めでたしめでたしでした。
(佐々木)


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「心のカウンセリング」 平成20年3月25日 第174号に掲載

 サイコロネットでは一般の方々のカウンセリングに対する認識を調査するためにアンケートを おこなっていますが、カウンセリングについての意見を書いてくれる人もたくさんいます。その中で、カウンセリングというものを医師がしているのだと誤解しているケースが結構見受けられます。

「以前カウンセリングを受けた際あまりきちんとしたお医者様ではなかったのか、非常に不愉快な思いでした。話もほとんど聞いてくれず、がっかりして帰った記憶があります。」、「一度つらくて精神科に行ったことがある。肝心の先生との話では、何しに来たの?と言われ、話を聞いてもらって楽になりたかったのに、泣いて帰って来ました。」、「私が行ったことのあるカウンセリングは、1時間待ち1分って感じでした。話を聞くじゃなく薬を増やす・・でした。」

 これらの例は、本当のカウンセリングがどのようなものなのかを知らないゆえに起こる誤解でしょう。もちろん、医師がおこなっているカウンセリングとも違うもので、単なる診察の範囲内での会話をカウンセリングだと誤解しているわけです。確かに、保険で認められているカウンセリングという行為は、医師がおこなうことになっているのですから、医師がカウンセリングをおこなうと思っても当然と言えますが、一つだけ一般の方々に理解していただきたいことは、最近世間でよく使われるようになった、コンサルティングという意味のカウンセリングと、心のカウンセリングはまったく別なものであるということです。

 心の病気になってしまった方や、深い悩みに苦しんでいる方々が求めているのは、コンサルティングとしてのカウンセリングもさることながら、心のカウンセリングなのです。だからこそ、「話もほとんど聞いてくれず、がっかりして」、「話を聞いてもらって楽になりたかったのに」、「話を聞くじゃなく」ということばになるのではないでしょうか。ただ、心のカウンセリングを求めていると言っても、この場合にはもっと狭い意味の「傾聴」を求めているのです。心のカウンセリングと傾聴はまったく同じものではありませんので、ここでも誤解が起こりますが、このことについては、別な機会に述べたいと思います。

 ここに例としてあげた方々は、病院へ行くのだから心のカウンセリングをおこなってもらえるだろうと思ったけれど、実際には心のカウンセリングはおこなってもらえず、逆のことをされたということになります。これを心のエネルギーで考えると実に簡単です。エネルギーレベルがとても低くなってしまった患者さんは、病院へ行って、傾聴を通してエネルギーのレベルアップを願ったのに、反対にエネルギーを浪費して、さらにエネルギーレベルが下がって帰ってきたのです。

 心のカウンセリング、つまり、心のエネルギーのレベルアップをしてもらうためには、病院では無理で、傾聴の技術を身につけ、人間性の理解に努めているカウンセラーにカウンセリングをしてもらうしかないのです。 まず、このことを一般の方々に知ってもらいたいと思います。
(佐々木)
 


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「心のカウンセリング2」 平成20年4月21日 第175号に掲載

 少し脱線しますが、カウンセリングや心理療法(サイコセラピー)については、一般的にかなり誤解されているようです。あるホームページでは、次のように説明されていました。「セラピーやカウンセリングは、主に、現在抱えている問題を解決するために使われます。そのためにカウンセラーやセラピストは、その問題が生じる原因を探るため、クライアントとともに過去を振り返り、さまざまなことがらについて深く掘り下げていきます。」

 これは明かな間違いです。原因を探る心理療法も確かに存在しますが、過去には触れず、原因を探ることをしない問題解決型の心理療法も存在します。また、現在主流としておこなわれているカウンセリングは、問題解決する力は本人が持っているということを信じる、傾聴を主体とするものであり、話しを聴くのは過去の原因を探っているわけではなく、過去にこだわる現在の感情を聴いているのです。未来志向型の心理療法もあり、これは、現在の問題や現在の感情をも問題としないものです。カウンセリングや心理療法をどのようにおこなうかで定義づけをするのはそもそも無理があるのです。

 カウンセリングは、正しいコミュニケーションによって心のエネルギーのレベルアップ(一般的にはカタルシス:心の浄化と言われています)を目的とし、心理療法はパーソナリティーの変容を目的とすると定義づけするのが、今の私には一番しっくりきます。ただ、カウンセリングが心のエネルギーのレベルアップを目的としていても、その過程では気づきや洞察が起こってパーソナリティーの変容が起こりますし、心理療法がパーソナリティーの変容を目的としておこなわれるとしても、コミュニケーションを利用しなければ心理療法もおこなうことができないのですから、カウンセリングの要素が自動的に含まれます。このようにカウンセリングと心理療法は融合している面があります。

 クライエントから相談があった場合、まず、正しいコミュニケーションをとることが必要です。そして心のエネルギーを与えることが必要ならば傾聴し、パーソナリティーの変容(行動・考え方・感情の変化)が 必要ならば心理療法をおこなうのです。さらに私の場合には、専門的な情報の提供が必要であればコンサルティングをおこない、心のリハビリが必要であればそれなりのトレーニングをおこないます。つまり、クライエントが必要と していることを判断し、それを提供することが一番大切だと考えています。
(佐々木)
 


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「悩みの対処法1 うつ病1」 平成20年5月7日 第176号に掲載

 メール相談で個別の悩みに対して対処法をアドバイスしていますが、一般的な対処法についてまとめ、サイコロネットがどのように関われるか、援助できるかについて触れたいと思います。まず、最もポピューラーなうつ病の対処法を採り上げます。

 うつ病は、ストレスなどによって心のエネルギーレベルが低下した状態が続き、脳神経伝達物質の代謝障害が起こることで固定化され、心のエネルギーレベルが元に戻らなくなった状態だと考えられます。抑うつ気分、活動への興味減退、食欲の著しい減退又は増加、不眠又は睡眠過剰、動作緩慢、気力減退、罪責感、思考力・集中力の減退、自殺念慮などの症状が起こります。胃腸障害、身体の痛みなどの身体症状を伴うことも多く見られます。

 治療方法は、一般的には、薬物療法、心理療法、休養とされていますが、心のエネルギーレベルが下がり、それが固定されてしまうことから引き起こされるという考え方からは、エネルギーレベルを下げている要因を取り除くこと、外部からエネルギーを入れること、自然治癒力を取り戻し自分自身でエネルギーレベルを高められるようにすることが治療方法になります。

 薬物療法は、抗うつ剤が脳神経の伝達物質の代謝障害に有効に働きます。エネルギーレベルを上げるためのハードを正常にもどすという意味で効果があります。しかし、抗うつ剤はエネルギーレベルを下げている心の原因まで解消するわけではありません。うつ病が再発しやすいのはこのためです。抗不安薬や睡眠薬は、心理的・肉体的な苦痛を軽減しますので、間接的にエネルギーレベルの低下を防ぐ働きがあります。

 心理療法は、ストレスを受けたときにエネルギーレベルが下がってしまう心の働きを改善し、心のエネルギーの回復力を高めます。再びうつ病にならない、強い体質を作る根本的な治療方法です。ただし、機能障害を直接治すわけではありませんので、この部分は薬物療法に任せる方が合理的です。心理療法とは別に傾聴主体のカウンセリングがありますが、これは辛い気持ちを受け止め、一時的にエネルギーレベルを高める働きがあります。

 休養というのは、仕事や学校などを長期間休んで自宅などで静養するということですが、仕事や学校などの社会的活動は大きなエネルギーを消耗しますので、エネルギーレベルの低下を抑えるという意味で重要です。仕事上のプレッシャー、学力・進路の問題、人間関係などがストレスとなって大きなエネルギーが失われ、うつ病になってしまうことがあるわけですから、原因を取り除くという意味でも大きなことです。

 ストレスの元となっているストレッサーをなくすことができれば、それに越したことはありません。長時間労働が辛ければやめる、人間関係が辛ければその人間関係を避けるなどということです。根本的にエネルギーレベルを下げる要因を取り除くことであり、休養というのはその一つの方法です。しかしながら、これらの対応ができないゆえに状態が悪くなることも多いものです。
(佐々木)
 


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「悩みの対処法1 うつ病2」 平成20年5月25日 第177号に掲載

 うつ病の治療方法は薬物療法、心理療法と休養がありますが、まず、精神科、心療内科、メンタルクリニックなどの専門科を受診し、薬物療法を受けるのが基本です。症状が軽ければ薬物療法だけで治ってしまうことも多いものです。病院ではもっぱら薬物療法がおこなわれますが、場合によっては、カウンセリングや認知行動療法などの心理療法をおこなってくれることもあります。

 薬物療法を続けてもなかなか治らない場合、再発を繰り返す場合は、心理療法が必要です。薬でハード(肉体)部分を良くしようとしても、一方でソフト(心)が状態を悪くする方向で働いていますので、これを正常にしなければならないのです。心のエネルギーレベルが非常に下がって、気持ちを支えてもらいたいという場合にはカウンセリングを受けると良いでしょう。

 カウンセリングと心理療法は混同されがちですが、一時的に心のエネルギーを高めてくれる傾聴主体のカウンセリングに対して、心理療法は、一時的には心のエネルギーを消耗しますが、自己回復力を高め、心のエネルギーレベルを正常に戻す根本的な治療法です。ただ、心のエネルギーレベルが低いと、心理療法は辛いという場合がありますので、その場合は薬物療法を続けながら、カウンセリングを受け、ある程度エネルギーレベルが回復してから心理療法を受けるとよいでしょう。

 病院へ行く、カウンセリングを受けるというのは、行くこと自体が大変ですし、人と会わなければならないことが辛いという場合があります。うつ病の初期に早めに治療を受ければいいのですが、仕事が忙しいなどの理由で治療をせずに状態が悪化すると、ますます行けなくなってしまいます。外出したり、人と会うのにも心のエネルギーが必要ですが、エネルギーレベルが下がってしまうと、これに費やすエネルギーさえ足りなくなってしまうのです。一旦は病院へ行っても医師の対応が悪い、カウンセリングを受けても、カウンセラーと相性が悪くて行かなくなってしまうということもあります。

 このような場合、メールカウンセリングが適当です。面接のカウンセリングに比べて、面と向かって会う必要もありませんし、わざわざ時間を決めて出かけていく必要もありません。生活の中で嫌なことがあったとき、ストレスをため込むのはうつ病にとって悪い影響を与えますので、吐き出してしまうに越したことはありません。メールカウンセリングであれば、こんな時にもすぐに対応してもらえます。インターネットの掲示板でアドバイスをもらうという方法もありますが、一長一短です。情報を得るという面では良い場合もありますが、心のエネルギーを奪われるような言葉を書き込まれる場合もありますので、きちんと訓練を受けたカウンセラーに対応してもらうのが良いと思います。

 自分を受け容れてくれる人であれば、カウンセラーに限らず、友人でも家族でも心の支えになります。話しを聞いてもらえる人がいれば、ぜひ愚痴をこぼしたり、話しを聞いてもらって下さい。ただ、うつ病の場合は、自責の念が強くなり、家族や友人に迷惑をかけているのではないかと思いがちです。話しを聞いてもらえる人が近くにいないのであれば、「いのちの電話」などの無料電話相談機関で話しを聞いてもらうのも良いでしょうし、 無料メール相談で辛い気持ちを受け止めてもらうのも良いでしょう。
(佐々木)
 


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「悩みの対処法1 うつ病3」  平成20年6月11日 第178号に掲載

 うつ病は、心のエネルギーレベルが下がる病気と考えられ、実際に心のエネルギーを使う精神的活動はだんだんできなくなっていきます。仕事や学校に行くのが辛くなり、掃除・洗濯・料理などの家事もだんだん辛くなっていきます。辛いというのは、それ以上エネルギーレベルが低下しないように心が発しているシグナルです。肉体の痛みと同じように、心の痛みなのです。従って、辛いことはせず、休養するということが必要になります。一般的には、仕事や学校を長期間休むことが、休養としてうつ病治療の一つの方法とされています。

 しかしながら、ここには落とし穴があります。うつ病と診断されたら、仕事や学校を休んで治療に専念したり、主婦であれば家事をせずに治療に専念すればいいかと言うと、必ずしもそうとは言えないのです。うつ病の特徴の一つに自責の念が高まることがあります。そのため、仕事や学校を休んでしまうと、そのことで自分を責めてしまうことがあるのです。家族が家事をしなくてもいいと言っても、家事が満足にできない自分を責めてしまうことがあるのです。だから、周囲の人が単に、「仕事や学校あるいは家事などを休んだらいい」とアドバイスすればいいというものではないのです。もちろん、「仕事や学校に頑張って行きなさい」と言うのは、論外です。

 休養というのは、あくまでも心のエネルギーレベルがそれ以上下がらないように、あるいは下がるのを最低限にくい止めるためにおこなわれなければ意味がありません。休養したためにかえってエネルギーレベルが下がってしまうのでは、何の効果もないのです。会社の場合には休めない状況もあるでしょうし、休みたいと言い出しにくい雰囲気もあるでしょう。周囲の人がその状況を改善できるのであれば、ぜひそれはそのように働きかけていただくとして、そうでないのであれば、仕事や家事は最低限続けながら、カウンセリングを受けるなどして、仕事や家事を休んでも自分を責めなくてもよいという思いを持てるようになることが先決です。

 場合によっては、辛くて会社を辞めたい、学校を辞めたいと思うことがあるかもしれませんが、うつ病が治るまではこのような重大な決定はしない方がよいとされています。辞めてしまった自分を責めてしまうことがありますし、うつ病は判断能力も低下させますので、そのときは最善の判断だと思っても、後から後悔することがあるからです。

 結論としては、仕事や学校が辛くて行けない状況であれば、もちろん長期に休むことを考えなければなりませんが、頑張れば行ける状況であれば、まず、薬物療法と心理療法によって治療することを考え、休むことは後回しでよいと思います。ただ、仕事や学業に頑張った分を、他の面でカバーする必要があります。これは、残り少ない手持ちのエネルギーをどこに使うかということであり、仕事や学業、家事に振り向けることも可能だということです。しかしながら、仕事や学業、家事にエネルギーを使い過ぎて、病院へ行けなくなってしまうのであれば本末転倒ですから、まず、病院へ行くことは最優先に考える必要があります。しなくてもよいものはせずに、どうしてもやらなければならないことはやればよいのです。優先順位をつけて、今すぐにやらなくてもよいものは後回しにしていけばいいのです。
(佐々木)
 


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「悩みの対処法1 うつ病4」 平成20年6月29日 第179号に掲載

 さて、うつ病であることがはっきりしていれば、今まで述べてきたような対処法を取ればいいわけですが、うつ病がはっきりわかるということは、専門の病院で診断を受けたということを意味します。病院へ行ったのであれば、医師の指示に従って治療を受ければいいわけですから、何もこのようなうつ病の対処法を読む必要はなさそうですが、実際には専門の病院へ行ったから必ず治るというものではありません。病院へ行っても治らない人やかえってひどくなる人、あるいは一度はよくなっても再発する人がいます。このような人にとって、この対処法は役に立つでしょう。

 また、うつ病の診断テストなどをやってうつ病かもしれないと思う人、うつ病の症状に合う人、あるいは不安感や抑うつ感が強く、エネルギーレベルが低くなっていることが感じられる人は、この対処法が適用できます。統合失調症、パニック障害などでも心のエネルギーレベルが下がりますので、基本的には同じような対処法になります。サイコロネットの無料メール相談で、どうしたらよいかという相談も多くありますが、内容から判断して、うつ病、統合失調症、パニック障害などのメンタルヘルス障害が疑われる場合は、アドバイスとして基本的にはこのような対処法をご紹介することになります。おかしいなと思ったとき、まずすべきことは精神科など専門の病院へ行くことです。

 うつ病では、抑うつ、不安、焦燥感、罪責感などの心理的な症状の他に、睡眠障害、胃腸障害、身体の痛みなどの身体症状が現れることがありますが、内科で診察を受けると異常なしですまされてしまうことも多いものです。精神科を紹介されることはあっても、うつ病と診断することはまずないでしょう。内科的な病気が原因であることも考えられますから、内科を受診することは無意味ではありませんが、異常なしと診断されたら、精神的なことが原因である可能性が高いわけですから、精神科を受診することが必要です。

 ただ、精神科を受診するということ、あるいはうつ病に対する偏見によって、なかなか専門の病院へ行くことに躊躇される方も多く、メール相談やメールカウンセリングを頼ってくることもあります。すでにご説明したように、メールカウンセリングにはカウンセリングとしての役割があり、病院の薬物療法にとって代わるものではありません。確かに病院へ行かずにうつ病が治る場合もありますが、それは本人の自己回復力(自然治癒力)によるものです。カウンセリングには心理療法の要素もあり、この自己回復力を高める働きはありますが、基本的には薬物療法をおこなった上で、カウンセリングあるいは心理療法を併用するというのが最も効果的です。病院へ行けないので、カウンセリングあるいはメールカウンセリングをおこなうということがありますが、この場合にも基本的には病院へ行けるように勇気づけをおこなうことになります。
(佐々木)
 


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「悩みの対処法1 うつ病5」 平成20年7月18日 第180号に掲載

 うつ病あるいはその他のメンタルヘルス障害ではないかと思い、病院へ行こうとするとき、どの診療科を選べばいいのかということは重要です。基本的には精神科を受診すればいいのですが、最近は心療内科もよく選ばれているようですので、この違いについて説明したいと思います。

 精神科は精神医学をバックボーンとし、うつ病や神経症、統合失調症、広汎性発達障害など広く心の障害を扱っています。一方、心療内科は、内科学から発展してきた心身医学をバックボーンとし、患者さんの身体面だけではなく心理・社会面を含めて、人間を統合的に診ていこうとするものです。病気としては、心理的なことが主な原因で身体に症状が現れる心身症を専門としています。精神医学か心身医学かの違いがあるわけです。もっと言えば、精神科医か内科医かの違いということになります。

 本来の診療科の主旨から言えば、うつ病ではないかと思う場合は、精神科を受診すれば間違いがありませんが、精神科あるいは精神病院には偏見によるイメージの悪さがつきまとい、実際、患者さんは精神科の受診を敬遠する傾向があります。心療内科は平成8年に新しくできた診療科で、精神科のような偏見がなく、内科でありながら、心理的なことが原因である病気も扱うわけですから、何の病気かわからないけれど、内科的な症状が現れている患者さんは、とりあえず精神科より心療内科に行きやすかったのは当然のことなのでしょう。

 日本では、医師は専門外の診療科の看板を掲げることも自由ですから、精神医学を専門としていなくても、法律上は心の病気の治療をおこなうことができます。精神科医でなく、内科医でも、うつ病の治療ができるわけです。このため、心療内科でうつ病と診断しても、精神科に回すことをせず、治療がおこなわれることになります。患者側から見れば、心療内科でうつ病の治療をしてもらえるのですから、それは有り難いことなのでしょう。この実体から、心療内科は「軽症の精神科」という誤解が広まって、うつ病や不安障害などの患者さんが押しかけるようになっていったのでしょう。

 これに拍車をかけたのが、精神科医の対応です。精神科のイメージの悪さを改善する方向ではなく、患者が多いからという理由で、心身医学を専門としない精神科医が多数診療内科の看板を掲げているという実体があります。心療内科の80%が精神科医であるとの指摘もあり、実質的には精神科と心療内科の区別は難しくなっています。心療内科の他に、神経科、メンタルクリニックという看板を掲げることもあり、実質的な中身は精神科とほぼ違わない状況です。

 さて、心療内科はうつ病患者さんを病院へ向かわせやすくしたという功績はあると思いますが、私たちは精神科の代わりに診療内科を勧めてよいものでしょうか。心療内科を勧めた場合の問題点は何でしょうか。それは、医師ではない私たちは診断することができないということに関係します。うつ病が疑われたとしても、うつ病と決まったわけではありません。症状は似ていても、統合失調症かもしれませんし、もっと重い精神病があるのかもしれません。まだ何の病気かわからない段階では、あらゆる可能性を視野に入れて対処できるようにする必要があるのではないでしょうか。

 そもそも心療内科の看板を掲げたということは、精神科ではない、精神病は扱わないと表明したようなものです。従って、精神科の代わりに診療内科を勧めるのは気が進みません。結果として、診療内科の本来の主旨も考慮し、心の病気が疑われる場合には、基本的に精神科またはメンタルクリニックを勧めるのがよいのではないかと思います。ただ、どうしても精神科の受診には抵抗がある、近くに精神科やメンタルクリニックがないという場合は、とりあえず診療内科でも良いのではないでしょうか。薬物療法が必要な場合には、何科であれ、病院へ行くことが第一歩です。
(佐々木)
 



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