心意雑感 

サイコロネットメールマガジンに掲載された、心に関する雑感です。

 

P19 (No191〜200)

「悩みの対処法4 社会恐怖(社会不安障害)」
平成21年5月29日 第191号に掲載

 大勢の人の前で演技をしたり、偉い人の前でスピーチをしなければならないとき、私たちは緊張し、「あがる」ことがあります。しかし、それが原因で日常生活に支障をきたすことはなく、何回か同じ状況を繰り返せば、自然に慣れてあがりにくくなります。これに対して不安障害の一つである社会恐怖は、非常に強い不安や苦痛を感じ、慣れることがないために、しなければならないことであっても避けるようになり、ひどくなれば仕事ができない、家から出られないなど、社会生活にも大きな支障をきたします。

 いわゆる対人恐怖ということで、「人前で発言する、知らない人と会う、会社で電話をとる、人前で食事をする、人前で字を書く、パーティーに参加する」などの場面で恐怖を感じる例が多く見られます。強い不安感や緊張を感じ、頭が真っ白になり何も答えられない、声が出ない、手足の震え、めまい、動悸、赤面、汗が出る、吐き気がする等の症状が現れ、ひどくなればパニック発作を引き起こし、パニック障害を併発することがあります。また、心のエネルギーを消耗しますので、うつ病を併発することもあります。なお、恐怖と不安は、具体的な対象があるかないかという違いであり、症状としては同じです。

 身体症状は精神科などで薬物療法を受けることで良くなりますが、「人前では必ず失敗して恥をかくに違いない。失敗する自分を人前にさらすことなど耐えられない。」などという偏った思いこみ(認知の歪み)が強いことが、恐怖心を強めていますので、これを改善するには心理療法によらなければなりません。特に認知行動療法が効果的とされています。認知行動療法以外では、催眠や自律訓練法も場合によって良いと思います。病院で薬物療法を受けているにも関わらず症状が改善しない場合は、これらの心理療法を受ける必要があります。

 人前に出ることが苦痛だが、何とか耐えられ、身体症状もひどくないという場合は心理療法だけでも効果があります。内気、恥ずかしがり屋などという性格としての行動傾向も心理療法で改善することができます。ただ、傾聴主体のカウンセリングは、直接認知の歪みを直すわけではありませんので、気持ちを支えてもらう点では意味がありますが、治療としては考えない方が良いでしょう。一般的には、カウンセリングと心理療法が区別されていないことが多いので、受けるときに、どのような技法をおこなえるか確認する必要があります。カウンセリングを受けているにも関わらず、効果が見られない場合は、適切な技法かどうかも含めて再検討する必要があります。

 社会恐怖もひどくなりますと、病院へ行って看護士や医師に会うことすら恐怖を感じて行けなくなってしまうこともありますし、外出することすらできなくなってしまうことがあります。そうなれば、当然面接のカウンセリングや心理療法を受けることもできなくなります。病気を治したいのに治せないというジレンマに陥ってしまうわけです。そんな場合には、メールカウンセリングを受けて、病院へ行くことを一つの目標として、勇気づけをしてもらうと良いと思います。

 認知行動療法は、自分の考え方の習慣を変えることになりますので、結構エネルギーを必要とします。心理療法が辛い場合は、傾聴主体のカウンセリングを併用したり、薬物療法によって、ある程度エネルギーレベルが上がってから、おこなうと良いと思います。メールによる心理療法は、まだできる人が少ないのですが、費用や時間的にもメリットがありますし、効果も上がっていますので、今後は地方の方や外出が困難な方には、治療の主流となり得る方法だと考えています。サイコロネットでは、認知行動療法を応用した心のトレーニングを「自分を愛するプログラム」として、メールでおこなっており、大きな成果を上げています。
(佐々木)


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「悩みの対処法5 メンタルヘルス障害1」
平成21年7月3日 第192号に掲載

 メンタルヘルス障害というのは、うつ病や統合失調症、神経症などのメンタル面に障害が現れる心の病気を総称する言葉で、病名ではありません。心というのは、感情、思考、行動の側面がありますので、そのいずれかの健康が損なわれれば、メンタルヘルス傷害ということになります。不安感や落ち込みが続く、考えがまとまらず混乱する、家事をやろうと思ってもできないなどということがあれば、メンタルヘルス傷害を疑ってみる必要があります。今までテーマにしてきた、うつ病、パニック障害、統合失調症、社会恐怖などは割合よく見られるメンタルヘルス傷害です。これらの対処法を個々に述べてきたわけですが、みなさんはこれらの対処法が基本的に同じだということに気づかれたでしょうか?

 不安神経症、強迫神経症、摂食障害、適応障害などの対処法も基本的には同じです。症状としては様々ですが、心のエネルギーレベルがとても低くなっており、心が働くための脳神経の機能に障害が現れていることが共通しています。さらに多くのメンタルヘルス傷害では、肉体そのものにも機能障害が現れるのが普通です。なぜなら、メンタルヘルス傷害の多くはストレスに伴って起こっており、また、メンタルヘルス傷害の症状そのものがストレスとなるためです。人はストレスを受けると、その状態に耐えるために心理的、肉体的に影響を受けるのです。

 対処法は、心身を元の健康な状態に戻せば良いわけですから、変わってしまったのは何かを考えます。変わったのは、脳神経の機能、肉体の機能、心のエネルギーレベルであり、また、それらを健康な状態に保つ心身の自然治癒力も低下しているのですから、これらを元通りにすることが対処法ということになります。これは、心の病気ではないかと思ったとき、どうしたら良いかという一般的な答えになります。

 従来の対処法は、薬物療法とか心理療法とかいう治療法を主体に考えており、特に病院に依存して治療しようとすれば薬物療法だけに頼ることがほとんどになってしまいます。薬物療法が、これらの変わってしまったことをすべて元通りにしてくれるのなら、言うことがないのですが、脳神経の機能低下と肉体の機能低下しか対象にしていないのですから、薬物療法がどんなに効いたとしても、元通りにならない人が沢山出てしまうのです。元通りの心身を健康な状態に戻すにはこれらの変化してしまった全ての項目を元通りにする必要があるのです。これは、実はメンタルヘルス傷害にかかわらず、あらゆる病気の治療の基本なのではないでしょうか。

 では、それらの変化してしまった要素を元通りにする方法を考えてみましょう。まず脳神経の機能ですが、抗うつ剤や抗精神病薬、抗不安薬など、機能の異常状態に応じた薬物が効きます。心は脳の働きであり、ハードとしての脳神経に異常があれば心も正常に働きませんので、まず、正常に戻さなければなりません。薬物療法は、日本では医師しかおこなうことができませんから、メンタルヘルス傷害ではないかと思えたら、基本的には病院へ行くことが必要です。どのような機能障害があるかによって薬の処方が変わるだけで、薬物療法で治療するのが基本です。

 肉体の機能については、頭痛や胃痛、筋肉痛など身体に痛みがある、胃や腸に不快感がある、下痢・便秘など機能低下がある、動悸・息切れをする、など様々な症状が考えられますが、これらは不快であり、心のエネルギーレベルを下げる原因にもなりますので、やはり薬物療法で症状を抑える必要があります。症状によっては、漢方薬や整体・マッサージなどを使うこともあるでしょう。

 以上は、病院で治療がおこなえ、これだけで不快な症状がおさまることも多いものです。症状が軽く、心身の自然治癒力があまり低下していなければ、症状が抑えられることにより、不快感が減少し、ストレスも軽くなりますので、自然治癒力によって、元通りの健康体に戻っていくからです。
(佐々木)


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「悩みの対処法5 メンタルヘルス障害2」
平成21年8月14日 第193号に掲載

 心のエネルギーレベルの低下を元に戻すためには、心のエネルギーを注ぎ込むだけではなく、心のエネルギーを消耗させている原因を取り除かなければなりません。エネルギーの消耗が激しければ、いくらエネルギーを注ぎ込んでもエネルギーレベルが上がらないということにもなりかねません。心のエネルギーを消耗させ、心のエネルギーレベルの低下を引き起こしているのは、外部の環境とそれをどのように受け止めるかという認知の働きが関わってきます。簡単に言えば、ストレスを受けている状態からストレスを受けていない状態に変えなければならないということです。

 治療を受けてもメンタルヘルス障害が良くならないのは、薬物療法が功を奏していない(薬が合っていない)こともありますが、ストレスを受け続けているために症状を悪くする力が働き続けているということもあるのです。エネルギーレベルが低いということは、ストレスを受け続けている証拠です。ストレスに耐えるために心のエネルギーを消耗してしまうのですが、ストレスを受け続けるとホルモン系と自律神経系に異常を来すために、心身ともに様々な症状が現れてしまいます。それがメンタルヘルス障害の症状を重くしているのです。

 ストレスを減らすためには、ストレスの原因となっている外的な要因であるストレッサーを避けることと、ストレス耐性を高めてストレスを受けにくい強い心を作っていくことが考えられます。ストレッサーを避けるというのは、人間関係でストレスを受けているのなら、その人間関係を避ける、仕事でストレスを受けているのなら、その仕事を休む、などということです。うつ病で仕事や学校を長期に休むことがあるのは、うつ病になるとストレス耐性が非常に低くなるために少しでもストレスを避け、心のエネルギーレベルがそれ以上下がらないようにしているのです。

 ただ、どんなにストレッサーを避けようとしても限界があります。家に居れば、家族からストレスを受けたり、病院へ行くことがストレスになったりすることがありますし、これが一番重要なのですが、自家中毒のように、自分自身の存在そのものがストレスになることも多いのです。病気がなかなか治らない自分にダメ出しをしたり、失敗ばかりしている自分を軽蔑すれば、それだけで心のエネルギーは消耗し、エネルギーレベルが下がっていきます。だから、ストレス耐性を高めて、ストレッサーに関わらずストレスを受けにくい自分を作っていく必要があります。

 悩みというは、心のエネルギーレベルが下がって、自分では対処できなくなった状態と言い換えることができますが、メンタルヘルス障害が起こる前の段階でも、悩みの状態が存在しますので、ストレス耐性を高めておくことがとても重要なことです。ストレス耐性が高ければ、ストレスによって受けるダメージが少なく、メンタルヘルス障害を引き起こすことが少なくなります。

 ストレッサーとなる外部の環境というのは、なかなか自分の思い通りになるものではありません。どのような環境であっても、それに適応してストレスを受けることなく生きていければ楽なのですが、物理的に適応が不可能な環境もありますし、適応するにしても限界があります。しかし、自分自身が適応する努力をせずに、ストレスの原因を外部のせいにしていては、いつまでたってもストレス耐性を高めることができません。

 悩みを抱える人は、往々にして悩みの原因は他人のせい、あるいは環境のせいと考えることがありますが、他人や環境が悩みの原因のせいだとしても、ぜひそれに負けないストレス耐性を身に付けることが肝要だと思います。ストレス耐性を身に付けるということは、認知の歪みを直す、マイナス思考を正しいプラス思考に変えるということと関係しています。
(佐々木)
 


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「悩みの対処法5 メンタルヘルス障害3」
平成21年9月24日 第194号に掲載

 ストレス耐性を高めると、ストレッサーがあっても、心のエネルギーを消耗せず、ストレス反応が起こりにくくなります。そもそも、ストレスというのは、人が危機を感じたときに、その危機を乗り越えようとする肉体的・心理的反応ですから、そのストレッサーを危機と感じなければストレス反応は起こりません。しかし、それは危機に対して鈍感ということであってはなりません。本物の危機に対しては、正常にストレス反応を起こし、本来危機ではないものに無用なストレス反応を起こさないということです。つまり、本物の危機かそうでないかを自動的に判断する機能が正しく働いているかいないかという問題になります。

 本当は危険ではないものを危険だと判断してストレス反応を起こしてしまうのは、認知の働きによります。人は、本能として危険を感じるものもプログラムされていますが、ほとんどは経験によって危険か危険でないかを判断しています。そのとき、必要以上に危険だということを考えて、それが繰り返されると、自動的に危険だとみなすようになってしまうのです。つまり、認知に歪みが生じてしまうのです。「人前でしゃべったらまた失敗して恥をかくのではないか、そんなことになったら大変だ」などという思いが、本来危険でないものも危険と見誤らせてしまう、認知の歪みということになります。

 もっと簡単に言えば、歪んだマイナス思考が多ければ多いほど、強ければ強いほどストレス耐性が低くなるということです。マイナス思考が強いと落ち込みやすくなるというのは、多くの人がストレスを感じない出来事や状況でも、自分にとっての脅威だと心が自動的に判断してしまい、ストレス反応を起こしてしまうためです。ストレス反応は肉体にも影響を与えますが、精神的にも影響を与えるのです。

 生命の脅威があれば、人は逃げたり戦ったりして、生き延びようとしますから、アドレナリンやノルアドレナリンといったホルモンによって肉体的に反応を起こすと同時に、恐怖や怒りなどの感情を引き起こし、その行動を助けようとします。そのとき、心のエネルギーを消耗しますので、それが続けば、心のエネルギーレベルが下がって、精神活動ができないという落ち込んだ状態が続いてしまいます。この結果、様々なメンタルヘルス障害を引き起こすことになるのです。

 ストレス耐性を高めることは、メンタルヘルス傷害を引き起こさないための予防になると同時に、メンタルヘルス障害の治療としても必要なことなのです。しかし、どうやってストレス耐性を高めたらいいかということについては一般的に教えられていませんし、わかったからといって簡単に実行できるということではありません。ストレス耐性を高めるためには、マイナス思考を減らせばいいのですが、マイナス思考というのは考え方の習慣であり、マイナス思考があることがわかっても習慣を変えることはとても大変なのです。

 このマイナス思考が強くなってしまうと、自分一人でマイナス思考の習慣を変えるのはとても難しくなってしまいますので、カウンセリングや心理療法を受ける必要が出てきます。カウンセリングや心理療法には様々な種類がありますが、最終的にはパーソナリティーの変容、つまり認知の歪みを正すことを目的にしています。

 感情に焦点を当て、傾聴を主体としたカウンセリングは、直接的にパーソナリティーの変容を目指していませんが、カウンセリングを受けることで、心のエネルギーレベルが上がり、洞察あるいは気づきによって、パーソナリティーの変容が起こります。しばしば何もアドバイスしてくれないと誤解されることがありますが、自分で気づくことがとても大切なのです。また、つらい気持ちを吐き出すことで心の重荷を下ろし、理解してくれているという思いが心のエネルギーレベルを高めます。
(佐々木)

 

以降の雑感は下記よりご覧ください。

http://archive.mag2.com/0000074874/20091129204000000.html


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